公開日:2024/06/25 更新日:2024/06/13
会社員は副業で個人事業主になれる?必要な手続きとメリット・デメリット
会社員として働きながら、スキマ時間を活用して副業を始める人が増えています。収入を増やしたい方や将来の開業準備のためなど、副業の目的もさまざまです。
本記事では、副業における個人事業主に着目し、メリット・デメリットをまとめました。また、副業で個人事業主になるために必要な手続きも紹介するので、実現に向けてぜひ参考にしてください。
会社員でも副業で個人事業主になれる
結論から伝えると、会社員でも副業で個人事業主になれます。ただし、副業として収入を得る全ての方が個人事業主になる必要はないため、状況に応じて選択してください。
また、将来的に独立や開業を目指して副業している方は、個人事業主として経歴を積み重ねておくのもよいでしょう。
個人事業主とは
個人事業主とは、企業に雇用されずに個人として仕事を請け負いながら利益を得る働き方です。税務署に開業届を提出することで個人事業主になれます。稼働時間や受注する仕事量を調整できるため、自分のペースで仕事をしたい人に向いています。
事業内容は多岐にわたりますが、フリーランスのクリエーターやコンサルタント、個人の店舗経営などが一例として挙げられます。
一方で、個人事業主になったとしても収入が保証されるわけではありません。請け負った仕事を責任を持って成し遂げられないと収入は得られないので、リスクを最小限に抑えながら活動することが肝要です。
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副業で個人事業主になることを検討する目安の収入
副業で個人事業主になるための決まりは、特にありません。検討すべき目安は、副業の所得が年間で20万円を超えたタイミングです。
副業で得た収入から必要経費を引いた金額、つまり所得が20万円以下の場合は雑所得であるため、原則、確定申告の必要がありません。本業以外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要であるため、20万円を一つの目安として考えてください。
その他に、事業拡大の可能性や法的な規制などを総合的に判断し、適切なタイミングで手続きするとよいでしょう。
また、住んでいる自治体によって、副業の年間所得が20万円以下でも住民税の申請が必要なケースもあるため、併せて確認しておいてください。
副業で個人事業主になるメリット
副業で個人事業主になると、収入が増えたり独立や開業などが目指せたりするなど、さまざまなメリットが得られます。ここで紹介するメリットが、自分の理想にあてはまるか考えながら読み進めてください。
本業以外の収入が得られる
副業で個人事業主になる最大のメリットは、本業以外の収入を得られることです。本業以外で定期的に収入が得られれば生活にゆとりが生まれ、新たな習い事や趣味にチャレンジすることもできるでしょう。
また、将来への備えもできるため、自己実現やライフスタイルの充実も期待できます。
独立・開業が目指せる
副業の収入が安定して増えていった場合、独立や開業を検討し始める人もいるのではないでしょうか。既に個人事業主として事業を進めていれば、事業の市場性や需要などを自分自身で確かめることができるため、リスクを最小限に抑えて起業の準備を進められます。
本業を退職後に個人事業主として開業・独立する方法もあります。しかし、副業として進めておくことで退職後はスムーズに移行でき、事業にも専念できるため、副業として個人事業主になっておくのも選択肢の一つです。
計上できる経費の範囲が広がる
会社員は給与所得であるため、控除できる項目が厳格に定められています。そのため、個人で調整することは困難です。一方の個人事業主は、パソコン購入費や通信費などの事業に必要な支出を経費として計上できるので、結果的に節税が期待できます。
これまで全額自己負担となっていた費用を、所得から経費計上できる点は、個人事業主の魅力といえるでしょう。
副業の損失や赤字が繰り越せる
個人事業主の場合、確定申告の際に副業を「事業所得」として申告できます。事業所得は事業の損失や赤字が発生した場合、本業の給与所得と事業所得の赤字を損益通算することで課税所得を減らし、税金の負担を抑えられる可能性があります。
個人事業主でない場合は「雑所得」で確定申告になるため、損益通算が受けられません。事業扱いにできるかどうかには判断基準があるため、税理士や専門家などに相談してみてください。
事業が軌道に乗るまでの最初の数年間は、赤字が発生するケースも考えられます。このような制度を覚えておくことで、副業に前向きに挑戦できるでしょう。
参考:国税庁「No.2250 損益通算」
青色申告特別控除が使える
個人事業主が青色申告を選択すると、最大65万円の控除が受けられます。確定申告前の定められた期間内に「所得税の青色申告承認申請」を提出しておくことで、青色申告を選択できます。
最大65万円の控除を受けるには、複式簿記による帳簿付けやe-Tax(電子申告)による申告などが必要です。税務署に開業届を提出する際に、同時に青色申告承認申請も済ませて、控除を受けるために必要な条件を確認しておくとよいでしょう。
参考:国税庁「No.2070 青色申告制度」
副業で個人事業主になるデメリット
本業を継続しながら副業で個人事業主になるには、確定申告の手間がかかる、プライベートの時間が減るなど、デメリットも生じます。ここからは、主なデメリットを4つ解説していきます。
確定申告の手間がかかる
副業で年間20万円以上の所得を超えた場合、確定申告が必要です。本業での収入は、所属する会社で年末調整をするため確定申告の必要はありませんが、副業で得た収入は自身で確定申告が必要です。
特に最大65万円の控除を受けられる青色申告の場合、複雑な帳簿付けが求められます。収入や経費の計算、必要書類の整理など、手間や時間がかかる作業が増えることがデメリットの一つといえるでしょう。
失業保険が受給できない
個人事業主の場合、会社を退職した際に受け取れる失業保険の受給が制限されることがあります。そもそも失業保険は、失業状態であることが条件です。本業を退職しても個人事業主の場合、失業状態と認められない可能性があります。
本業を退職する際にあまり収入が安定していない状態で退職すると、生活に困ってしまう恐れがあります。本業の失業保険受給を検討している場合は、個人事業主の廃業も併せて検討するとよいでしょう。
プライベートの時間が減る
これまで映画を見たりジムに通ったりしていた時間が副業の時間となるため、プライベートの時間が減ると予想されます。副業の業務が終わっても、帳簿付けや顧客管理などの時間を捻出しなくてはなりません。
なかには本業・副業・プライベートのバランスが崩れてしまい、ストレスや疲労がたまる人もいるでしょう。まずは本業に影響が出ないように、効率よく続けられる方法を見つけるのも、両立のポイントです。
税金の負担が増える
所得によってですが、税金の負担が増えるのもデメリットの一つとして挙げられます。本業としての給与所得に加えて、個人事業の所得に対する所得税や住民税が課税されるため、税金の支払い額が増える可能性があります。経費計上や青色申告の利用によって節税が期待できますが、それにも時間や労力が必要です。
ただし、本業で収入がアップした際にも税金の負担は増えるため、前向きに捉えてみてください。
副業で個人事業主になるために必要な手続き
ここからは、副業で個人事業主になるために必要な手続きを紹介します。これらの手続きを適切に行うことで、個人事業主としての活動をスムーズに開始し、効率的に事業を進められるでしょう。
開業届の提出
まずは住んでいる管轄の税務署へ、開業届の提出が必要です。書式は国税庁のホームページからダウンロードし、氏名・個人番号・住所・屋号・開業日など必要事項を記入します。提出方法は、税務署の窓口やe-Taxでの申請も可能です。
なお、土・日・祝日は税務署の閉庁日のため受付していませんが、時間外収受箱に投函(とうかん)することで、提出できます。
参考:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
青色申告承認申請書の提出
確定申告の際に事業所得から最大65万円の控除を受けたい人は、青色申告承認申請書の提出が必要です。ただし、確定申告前に提出する必要があるため、青色申告を希望する年の3月15日までと期限が設けられています。なお、1月16日以降に開業する場合は、2カ月以内の申請が必要です。
個人事業主が青色申告の適用を受けることで、所得税や住民税の軽減が期待できます。できるだけ最優先事項として覚えておき、開業届と一緒に提出するとよいでしょう。
参考:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
会計ソフトの選定・契約
他の人に依頼する場合を除き、個人事業主は自身で会計処理や経理処理を行う必要があります。会計ソフトは経費計上・売上管理・確定申告の作成などを効率的に行えます。会計ソフトによって機能や料金はさまざまなので、事前に自身の業務内容や予算に合った会計ソフトを選定して、契約手続きを進めておいてください。
自力でもできないことはありませんが、確定申告をできるだけスムーズに行うためにも、会計ソフトの利用も選択肢の一つとして覚えておきましょう。
副業で個人事業主になる際のQ&A
副業で個人事業主として働く場合、さまざまな疑問が生じるでしょう。ここからは、会社に知られずに副業をしたい方や、確定申告・税金・社会保険などの疑問について、具体的に答えていきます。
Q. 副業していることは会社にバレる?
A. バレてしまう可能性は否定できません。
会社に副業を知られたくない人もいるでしょう。副業の所得が増えると、住民税の金額が上がります。住民税決定通知書に記載されている住民税が、本業の給与よりも多いことにより、会社に気づかれてしまうケースも少なくありません。
副業の確定申告書を行う際に、住民税の徴収方法の項目で「自分で納付」にチェックを入れることで、副業分の住民税に関する書類が自宅に届くようになります。
ただし、本業の会社で副業が禁止されている場合は、副業を始める前に上司に相談して許可をとるか、副業を始めない方がよいでしょう。
Q. 確定申告しないとどうなる?
A. 無申告加算税・延滞税などが発生します。
個人事業主は、毎年2月16日から3月15日までの期間内に確定申告が義務付けられています。本来、確定申告が必要な人が期日までに申告できなかった場合は期限後申告として取り扱われ、ペナルティーとして無申告加算税・延滞税が上乗せされるため、注意が必要です。
無申告税は納税額の15〜20%、延滞税は期限日の翌日から完納する日までの日数分に対して7.3〜14.6%課税されます。
延滞金は期限日から日にちが経過するほど高くなるため、気づいた際は速やかに手続きしましょう。
Q. 税金の支払いはどうすればいい?
A. 納付期限内に納めてください。
税金は指定された期日内に納付する必要があります。本業の給与所得と個人事業主としての副業の所得を合計し、損益計算した後の金額に対して所得税や住民税が決定します。所得税は確定申告後、住民税は6月ごろに通知されるので、納付期限内に納めてください。
税金の支払方法や納付期限については、税務署のホームページや税理士のアドバイスを参考にするとよいでしょう。
Q. 社会保険はどうなる?
A. 本業で加入している社会保険を継続できる
副業で個人事業主になった場合、本業の会社で加入している保険を、そのまま継続できます。
本来、社会保険は複数加入できません。仮に2つ以上の会社に所属していても、一つの会社で加入していれば問題ありません。すでに何らかの保険に加入している方は、個人事業主になったからといって新たに社会保険や国民健康保険に加入する必要はありません。
Q. 開業届はいつでも出せる?
A. 開業日から1カ月以内を目安に
開業届は、開業日から1カ月以内に税務署に提出する必要があります。税務署は土・日・祝日が閉庁日のため、1カ月以内の期日が閉庁日の場合は翌平日までに提出します。
また、提出日が開業日から1カ月以上経過している場合はさかのぼることになりますが、開業届は受け付けてもらえ、ペナルティーもありません。
ただし、開業届を提出することで青色申告を利用できたり、屋号入りの銀行口座を開設できたりしてメリットも多いため、長期的に副業を考えている方は開業届の提出を前向きに検討してみてください。
まとめ
副業での所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。所得20万円を超えたタイミングを目安に、個人事業主になるかどうかを判断してください。
本業の会社に副業を知られたくない人は、住民税の支払いを自分で行うように確定申告書にチェックを入れましょう。
本業を継続しつつ個人事業主として副業を始めるのは、確定申告の手間やプライベート時間の制限などがあり、体力的にも精神的にも負担になるでしょう。ただし、収入アップや独立・開業が目指せるなど、将来的なメリットも期待できます。
自身の将来やライフスタイルに合わせて、本記事を参考に個人事業主になるか検討してみてはいかがでしょうか。
Uvoice編集部
ポイ活サービス「Uvoice」「Uvoiceブラウザ」を運営する株式会社ヴァリューズのUvoice編集部です。お得に暮らすヒントをご紹介します。
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